引用文献の選び方
査読の際に引用文献に関する指摘を受けることは、少なくありません。
Referenceの質がアクセプトに影響するのか興味があります。世の中にはオープンアクセスで質の低い論文を多く掲載しているジャーナルも多いですが、そういった論文を引用することは、論文のアクセプトに影響するのでしょうか?
論文は当然、内容で判断されるべきですので、掲載された雑誌の種類で判断されるべきではありません。ただ、これだけ多くの論文が発表されている中で、質の低い論文をふるいにかける必要性はあると思います。以下に記載することは、個人的にはその判断基準の参考に1つになると思っています。
特に注意が必要なのがMDPI系の雑誌です。いくつか見た感じでは、イントロの議論のすすめ方がチープなものが多く、やはり通常のジャーナルでアクセプトされなかった論文が掲載されていることが多いような印象です。これらのジャーナルはIFも高いため、見た目にも魅力的です。
MDPIが発行するAntibiotics誌の2021年1月号に掲載された93の論文がどの論文に引用されたかを調査してみました。(1ヶ月分で93報って正直驚きですし、調べるのは大変でした)
対象はpubmed掲載の雑誌に引用されたものと定義しました。
・これらの論文は、2021年11月時点で123の論文から引用されていました
・そのうち、同じAntibiotics誌からの引用が50報
・MDPI系の雑誌からの引用が88報
このように、掲載から1年未満で多くの論文が同じジャーナル、もしくは同系列が発行するジャーナルから引用されていました。一方で、メジャーな雑誌からの引用された形跡は一切ありませんでした。
誤解を恐れずに書きますが、Nature系のScientific report、PLOS、Fronteirsなども同様に高額な料金の掲載料を請求されますが、質の低い論文が多い印象です。また、これらの雑誌は論文がリジェクトだったときに、transferとして次の候補先の雑誌として、しばしば提案されてきます。これらのジャーナルに最初から投稿を目指している研究者は多くないと思います。つまり、リジェクトが繰り返された結果、これらのジャーナルに掲載されている可能性が高いということです。
最初にも書きましたが、当然論文は内容で判断されるべきで、掲載されたジャーナルで判断されるべきではありません。ただ、これらのジャーナルに掲載された論文は査読を担当する研究者からも同様の目で見られている可能性が高く、やはりこれらのジャーナルに積極的に投稿したり、引用したりするのは避けるほうが無難かなと思っています。
公平性を期すために、MDPI以外のジャーナルの引用も調べてみました。 Journal of Clinical Pharmacologyでは2021年1月に掲載された論文は13報でした。
・これらの論文は2021年11月時点で12の論文から引用されていました
・そのうちJCPに引用されたものは0でした
上記は引用された文献を調査しました。次はアクセプトされた論文の引用文献を調査したいと考えていましたが、別の研究が忙しくなってきたので、ここからはまたの機会にしたいと思います。
質の低い雑誌が必ずしも悪いかというと、そうではないという側面もあります。世界的に論文数が増えて、競争が激化している中で、初学者が掲載してもらうジャーナルは貴重ですし、そういう成功体験で多くの科学者が成長していくという側面もあります。
実際、私も初めて投稿した日本国外のジャーナルはAmerican Journal of Infection Controlでしたが、別のジャーナルにトランスファーを勧められ、そちらにアクセプトされたという経緯があります。このジャーナルはオープンアクセスで掲載料はありませんが、pubmedには掲載されなかったので、今考えるともっと別のジャーナルに再投稿すれば良かったと思います。ただ、当時はそのような知識もなく、言われるがままにトランスファーしてしまいました。
そういうことともあり、このような雑誌に掲載された論文は、メジャーなジャーナルにリジェクトされた経緯がある可能性が高く、特にきちんと内容を精査して評価する必要があると思います。(本来的にはすべての論文がそうされるべきだとは思いますが)
まとめると、個人的な経験に基づいた意見ではありますが、現状では質の低い引用文献をキーの論文として投稿することは、リジェクトのリスクであると考えています。ただ、それが本当なのかどうかは、いずれ調査できればと思います。
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