査読 2024
査読(する、される)に関していくつか思うところがあったので、自分自身に向けてという意味でもまとめておきたいと思います。
査読をすること
最近はIF3-6くらいのジャーナルから、月に数件結構依頼が来るようになりました。
(MDPIやBentham、~MSなんかのハゲタカっぽいのはもちろん受けませんが、
Frontiersは受けることもあります)
それなりのジャーナルだと、内容もしっかりしているものが多く、自分自身も勉強になることが多いです。
特に中国とか東南アジア圏からの論文がふられることが多いですが、臨床家で論文を書いている人たちは、日本人と同様に苦労しながら論文を書いていることがうかがえますし、アクセプトまで苦労しているって感じが原稿からも読み取れることが多いです。日本国外でも臨床と研究を頑張っている人がいることがわかるだけでも、エネルギーをもらえたりします。
なかなかアクセプトsuggetすることは多くないですが、アクセプトのために必要な統計解析の考え方とか視点なんかは必ずコメントに入れるようにはしています。
メタ解析の査読なんかでも様々なアウトカムを統合して結果を出してしまっている論文もあり、臨床的な妥当性がないものは、リジェクトsuggestしています。
アクセプトされにくい論文の共通項はいくつかあり、
- イントロ、考察が長すぎる(研究のfocusが定まっていない)
- 方法での様々な定義があいまい
- 多変量解析をして、詳細の記述がない(ORとPの記述のみで解析プロセスや結果がブラックボックス)
- 単変量解析またはステップワイズの変数選択→多変量解析をしている
- 無意味な図表の多用
こういったものは査読時に印象が悪くなると思います。
戦略的には原稿は必要最低限のシンプルな形にしておいて、査読後に追加指摘されたものを追加する方が、良いのかなとは思います。
査読をされること
Pharmacotherapy誌に掲載された以下の論文は、約1年くらいの毎月Editorとやり取りがあり、10回以上リバイス作業があったと思います。ただ、その分多くのことを学ぶことができました。
特にassociaiton editorに統計家の先生がついて、査読者よりも厳しいコメントをたくさんいただきました。
(アクセプト後謝辞掲載を打診しましたが、当たり前の仕事をしただけだと返信をいただき、査読する姿勢など見習うべきことがたくさんありました)
共同研究者の先生からデータの処理方法などは教わっていたので、ある程度の結果は出せていましたが、以下に記載するような不十分な点を多々指摘されました。
- 共変量
初めての診療DBの解析だったので、あまり複雑な解析はしたくないという意図もあり、シンプルなデザインにしていたのですが、かなりの数の共変量を追加させられました。やはり基本通り過去の文献に基づき、必要な共変量の洗い出しが重要だと再認識させられました。
- データの打ち切り censoring
このあたりの定義があいまいになっており、Fig2も追加して試験デザインを明確化しました。様々な用語の知識がなかったのですが、他の論文で勉強しながら試験デザインを見直し、再解析を行いました。
- 時変共変量 time-varying cox regression analysis
これもeditorから時固定ではなく時変データで解析するよう指摘がありました。
そもそも時変データでcox回帰をしたことがなく、データセット作成はかなり大変でした。
複数薬剤の時変データだと途中で開始・中止する併用薬データも入れ込む必要があり、このデータ処理の習得だけで1か月ほど要しました。(そもそも処方データを解析するコードの作成もR初心者の私には数か月を要しました)
- 定義
特にアウトカムの定義はICD-10コードを用いましたが、validationされていないものを用いたので、ここもeditorより代わりのvalidateされた定義が示され、感度分析など多くの解析が追加されました。
- 考察
あいまいな記述は、すかさず反論されました。これまでの論文では機序が不明な部分は結構ごまかして書いていたんですが、そういった部分のクオリティーの高さがとても大切になることがわかりました。別研究でもIF高めの査読を受けているところですが、イントロと考察の理論構成で特にキーになる部分は正確で具体的に記述することが求められており、新たに注意すべき点を学ぶことができたと思います。
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